rt_sasakiの日記

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気が向いたら書きます ツイ@rt_sasaki

寄稿②

自分用に書いて上手くいかなかったので、人のブログで供養したいと思います。

だってさ。誰とは言いませんけどね

 

カンガルーやコアラといった主役級がそうでもないから伝わりにくいのだけど、僕が見る限りオーストラリア固有の動物には中国人に似たものが多いようだ(ウォンバットとか調べてみてほしい)。これを現地の人に言ってみたら僕の顔をまじまじと見た後に「確かにそうかもなぁ。」と言っていたから、どうやら彼らに中国人と日本人の区別は付かないらしい。それはまぁ良い、中国版と言えば贋物や劣悪品の代名詞のように使われることもあるが、中国版中国人といったらそれは日本人のことを示すのだろうと僕も思っていた。ところでオーストラリアとニュージーランドは仲良くしているのだろうか?

オーストラリア、ここはひどく寒い。夏真っ盛りの東京から抜け出したのは二週間前だ。カンガルーを夢中で追いかけた後、アボリジニのダンスに熱狂した後など…よく太陽を見失う。冷静さを取り戻して、北の空を探せばそこに見つかるのだが、東京の空からビルの隙間を掻き分け僕を焼き尽くそうとしていたあの姿は見る影もない。教室から出ていけと言われた小学生(僕は本当に出てしまうタイプだったのだけれど)のように、広すぎる北の空にポツンと…ただそこにいる。

 そんなわけでオーストラリアには太陽信仰があまり見られない。アボリジニのなかでも特異な存在というある村は星空信仰を基にした祭りを四年に一度行うらしい。旅の目的はその祭りを見ることだった。インターネットにも微かな情報しかなく、現地で情報を集めているうちに、それが明日行われることが分かった。あと一日でも長くカンガルーと追いかけっこをしていたらと思うとぞっとする。あるアボリジニのおじさん(観光客に媚びて金を稼いでいる特薄のアボリジニだ)は、「あれに行くのか…。悪いことは言わん、やめておけ…」と言った。観光客に媚びきった酷い訛りの英語であったので実際は何を言ったのか分からなかったが、ゲーム脳の右脳淋にはそう聞こえた気がした。

 深い森の中、音を頼りに進んでいった。大きな太鼓の音が聞こえる、いかにも祭りらしい。明かりの漏れる木の葉をはぐると視界が開け、ついに私は祭りの現場を目にした。カンガルーとコアラ、その他オーストラリア固有種が三つの陣営を形成し大きな円を作っている。それぞれ百匹ずつくらいだろうか。中心にはピコ太郎がいる、太鼓を叩いているのは古坂大魔王だ。一際大きいカンガルーとコアラがピコ太郎の元に近づいて、腹の袋から赤ちゃんを取り出した。コアラの袋からシロクマ、カンガルーの袋からクロクマが出てきた。なんで?僕は混乱した。 それを受け取ったピコ太郎は軽く踊ってから「んm~~~~」と二つの赤ちゃんを合体させ(これは読めていた)、一匹のパンダの赤ちゃんを中国人に手渡した。その他オーストラリア固有種のうち一匹が中国人になっていたのだ。

 それが百十八回繰り返された。その間ずっと古坂は太鼓でPPAPを叩き続けていたが、そのリズムに合わせてピコ太郎が儀式を執り行ったのは偶然のものを除けば最初と最後の一回ずつだけだった。パンダがこんな風に製造されていたとは…。

「いや、星空信仰要素は!?」思わず大声で突っ込んでしまった。カンガルーとコアラに、いまや中国人となったオーストラリア固有種の面々、そしてピコ太郎が一斉にこっちを向いた。古坂大魔王は太鼓を叩き続けていた。やばい、こんな秘密を知ってしまったからには殺されるかも知れない。四匹の特に強そうなカンガルーがおもむろに近づいてきて、横一列に整列した。死を覚悟して目を閉じた。が、何も起きない。恐る恐る目を開くと、右側と左側それぞれのカンガルーが頭同士で支えあいM字を形成していた。Wの上下をひっくり返した形と言った方が近いだろうか。 「カシオペア座…?」 カンガルーが頷いた。それから他の貧弱そうなカンガルーやコアラたちも星座を再現した組体操を見せてくれたが、どれもカシオペア座より難しそうなものばかりであった。中国人たちはパンダを中国に密輸(!)する飛行機の時間があるらしく途中で帰ってしまった。

なんだったのだろう。考えながらホテルに向かって歩いていると、青の法被を着た男が何やら呻きながらうずくまっていた。声をかけようと近づくにつれ、男の言っている内容が聞きとれるようになった。「どうせこんなんヤラセやん。また叩かれるんや。そんでホンマに古坂とピコ太郎は別人やったんかい。ヤラセ、アカン。アカンアカンアカーーーン…。」 短い咆哮を残して男は息絶えた。背中の「祭」の文字が泥で汚れてしまっていた